もっとがんばらなきゃ!
失敗してはいけない…!
ちゃんとやらなきゃ…
こんなふうに考えて、心が疲れてしまうことはありませんか。
仕事では常に100点を求められ、SNSでは人と比べて焦り、
家事や育児でも「完ぺきにやらなきゃ」と自分を追い込んでしまう。
そんなあなたは毎日必死にがんばっていて、
本当に素晴らしいと思います。
でも、完ぺき主義で生きると、心も体もずっと緊張しっぱなしです。
そして、ほんの少しの失敗やミスで「もうだめだ」と落ち込んでしまう……。
そんなとき、仏教の「中道(ちゅうどう)」という考え方が、
心をゆるめるヒントをくれます。
この記事では中道の考え方や、
日常生活への取り入れ方を丁寧に解説していきます。
中道とは?
「中道」とは、お釈迦さまが見つけた“ちょうどいい生き方”のことです。
お釈迦さまはもともと王子でしたが、
人生の苦しみの原因を探るために城を出て、厳しい苦行を続けました。
一日に、ほんの一粒の米しか食べない
息を止める
体を痛めつける
……そんな極端な修行を続けても悟りには至らなかったといいます。
ある日、餓死寸前のお釈迦さまが川で倒れていると、
村娘が差し出した乳粥を口にします。
すると少しずつ力が戻り、
「こんな苦しいだけの修行では悟れない」
と気づいたのです。
苦しみを生むのは快楽への執着だけではなく、苦行への執着もまた同じ。
そこでお釈迦さまは、
「快楽にも苦行にも偏らない道こそが悟りに至る道」
と気づき、これを「中道」と呼びました。
つまり中道は、
ただの中間点ではなくバランスを取る智慧のこと。
苦しみを避け、心が安定する方向を選ぶためのコンパスなのです。
完ぺき主義と中道の違い
現代人が陥りやすい完ぺき主義とは、
”0か100か”で物事を判断してしまう思考です。
「100点じゃないと意味がない」「ミスしたら終わりだ」と考え、
常に緊張状態になります。
一方、中道は「そのときの最善を選ぶ」柔軟な生き方です。
80点でも十分
今日は60点でもいいかもしれない
失敗したっていいじゃない
このようにその日の体調、環境、心の状態に合わせて、
”ほどよい落としどころ”を見つけていく考え方です。
心理学では”All-or-Nothing思考”、
いわゆる白黒思考がストレスを増やすと言われています。
中道の考え方は、まさにその真逆。
白か黒かではなく、グラデーションを見つける力を育てます。
日常でできる中道的な選択
では、わたしたちはどうやって中道的に生きることができるのでしょうか。
きょうは仕事面、人間関係、健康・生活習慣という
三つの場面にわけてご紹介していきます。
〈仕事〉
あなたの、細部までこだわって仕事をするその姿勢、
本当に素晴らしいことだと思います。
ですがすべてをがんばるのは、やはりしんどいと思います。
他の人がテキトーにやっているのを見ると、イライラもしますしね。
なので、妥協できる箇所は少しスルーして、
自分の中で「ここは大事!」という部分だけをがんばるのはどうでしょうか?
例えば、
残業が続いているなら、思い切って「きょうはここまでにする!」と切り上げる
完ぺきな資料(100点満点)よりも70点くらいで一旦提出して、フィードバックをもらう
このように、がんばる箇所の”優先順位”をつけるとメリハリもつき、
優先順位の高い箇所をよりがんばれるのではないでしょうか?
〈人間関係〉
相手に合わせすぎると苦しいですが、自分の主張ばかりでも関係はこじれます。
「ここまでは合わせる、でもここからは譲れない」
と境界線を引くことで、周りとの距離感を適切に保てるようになりますよ。
〈健康・生活習慣 〉
急なダイエットや過酷な運動は続きません。
週に3回だけ、15分歩く
夜は早めにスマホを見ないようにする
一日に5分だけ、丁寧にストレッチする
このように無理なく続けられることを優先し、
「できた」を積み重ねた方が結果的に効果も得られやすくなりますね。
中道とは、怠けることでも妥協することでもなく、
長く続けられる方法を選ぶ智慧なのです。
最善主義を身につける3つのステップ
ここでおすすめしたいのが「最善主義」という考え方。
最善主義とは、「完ぺき」ではなく”いまできるベスト”を目指す姿勢です。
〈基準を下げる勇気をもつ〉
まずは80点でOKと決める。「提出する」「始める」ことを最優先に。
〈いまの自分を観察する〉
疲れているなら早めに寝る、元気なら挑戦してみる。
瞑想や日記で、自分の状態に気づく習慣を持つと◎。
〈振り返りと調整を習慣にする〉
「きょう、できたこと」を3つ書き出し、自分を褒める。
そして明日はどんなバランスにするか決める。
こうして毎日「ちょうどいい」ラインを探していくと、
完ぺき主義の呪縛から解放されていきますよ。
まとめ
中道は、
ただの中間ではなく、心と体が安定するポイントを探す智慧
がんばりすぎても苦しいし、怠けすぎても後悔します。
だからこそ、今日できる最善を選ぶことが、長く続けられる秘訣です。
完ぺきじゃなくていい。
少しずつ、自分にやさしい「ちょうどいい」を見つけていきましょう。
それが、お釈迦さまが見つけた悟りの道「中道」を、
現代に生きるわたしたちが実践する第一歩です。


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