わたしたちは日々、たくさんの
「欲しいもの」「こうあってほしい未来」「こうすべきだった過去」
に心をとらわれながら生きています。
仕事の結果、人間関係、持ち物、見た目、評価……
一つ一つは小さなこだわりでも、
積み重なると心がとても重くなってしまいますね。
この記事では”何かにしがみついている自分”に気づいたときに実践できる、
執着の手放し方をお届けします。
「空」の考え方から学ぶ、執着を手放す練習
仏教には「空(くう)」という考え方があります。
これは「何も存在しない」という意味ではなく、
あらゆるものは固定された実体を持たず、常に変化し、つながりの中で成り立っている
という教えです。
わたしたちが「絶対にこれが欲しい」と思っているものも、
時間がたてば変わり、状況によって意味も変わっていきます。
たとえば、昔とても欲しかった服をいま見たとしても、
もう着たいと思わないかもしれません。
「やらかしたぁ…」と大きな失敗だと感じた出来事が、
数年後には人生の転機になっていたと気づくこともあります。
このように、物事はいつも流れ、変わり続けています。
空の考え方を心に置いてみると、
「執着しなくても大丈夫かもしれない」と思える瞬間が増えていくでしょう。
ここからは、
日常でも取り入れやすい執着の手放し方をご紹介しますよ。
「これは変わるものだ」とつぶやいてみる
心がなにかに強く反応しているときは、
「これは変わらないものではない」と言葉にしてみましょう。
「変わっていくもの=うつりゆくもの」と認めるだけで、
心の硬さが少しやわらぐことがありますよ。
”いまこの瞬間”に立ち返る
執着は、過去や未来への思いから生まれることが多いです。
呼吸に意識を向け、
「いま、息を吸っている」「いま、ここにいる」
と確認してみます。
すると、過去への後悔や未来への不安が、
ほんの少し遠くに下がっていく感覚を味わえますよ。
小さな”手放し”を体験する
- 使わなくなった物をひとつ手放す
- 気になっていたタスクを終わらせる
- 言えなかった「ありがとう」を伝える
こうした小さな行動が、
執着をゆるめる練習になります。
すぐに効果が実感できなくてもよいのです。
小さな手放し体験を少しずつでも積み重ねていくと、
気づけば手放すことに躊躇しなくなるはずです。
次の章からは、人間関係から来る執着や期待について、
詳しく見ていきましょう。
人間関係での「空」の実践
人との関係にも、わたしたちは強い執着を持ちます。
「嫌われたくない」「あの人ならきっとこうしてくれるはず」
といった思い込みです。
しかし、人の心も常に変化していて、
相手の言葉や態度もその時々で変わります。
もし誰かの言葉に傷ついたとき、
「この人の今の言葉も、明日には変わるかもしれない」
と考えてみます。
そう思うだけで、心に余白が生まれます。
また、逆に
「この人がずっと自分を大切にしてくれるはず」
という”期待”も、やわらかく手放すと関係が楽になります。
相手を「こうあるべき」と縛らないことが、
自分を縛らないことにもつながるんですね。
健康や体調に対する執着
体調が悪いとき、わたしたちは
「早く元気にならなくては」と焦ってしまいます。
しかし空の考え方を思い出すと、
「いまの体調も変わりゆくもの」と受け入れやすくなります。
きょうはゆっくり休んで、明日は少し動くと決める
そのときどきの、
自分のからだと丁寧に対話しながら生きると、
回復も自然に早まりますよ。
仕事と「空」
また、仕事にも執着が生まれます。
「結果を出さないと出世しない」
「失敗したら自分の評価が下がる」
「きちんと誠実に対応しないと信用してもらえない」
「笑顔を絶やしては相手を不安にさせてしまう」
「常に”やさしいわたし”でなければ意味がない」
その思いが強くなると、
かえって視野が狭くなってしまいますよね。
仏教の空の視点では、実は
成功も失敗も結果に過ぎず、絶対的なものではありません。
今日の失敗が、
半年後には大きな学びになっているかもしれません。
ひとつの結果に心を縛られず、
人はずっと、変わっていくプロセスの中で生きている
と考えることで、次の一歩を軽く踏み出せるようになります。
おわりに
仏教の経典『般若心経』には、
「色即是空(しきそくぜくう)」という言葉があります。
これは「形あるものはすべて空である」という意味です。
逆にいえば、
空であるからこそ、どんな形にも変わることができる
と言えることもできます。
わたしたちの心も同じです。
一度強くこだわったからといって、
ずっと握りしめていなくてもいいのです。
変わることを受け入れ、流れるように生きると、
心がとても軽くなります。
最後に、わたし自身がよく思い出す言葉をご紹介します。
手放すことで、ほんとうに必要なものが見えてくる
もしあなたがいま、
何かにしがみついて苦しいと感じているなら、
少しずつその指をゆるめてみてください。
その先には、きっともっと自由で広い景色が待っていますよ。
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