すべては移ろうからこそ”いま”を生きる|「無常」の教えと実践

ブッダの言葉

わたしたちの日々は、変化の連続です。

天気が移り変わるように、
わたしたちの気分や状況も刻一刻と変わっていきます。

しかしときに、「このまま変わらなければいいのに」と思ったり、
逆に「早く変わってほしい」と願ったりするものです。

仏教では、この変化そのものを「無常(むじょう)」と呼びます。

無常とは、すべてのものが生まれ、変わり、やがて消えていくという真理です。

これは決して悲しいことではなく、むしろ、
わたしたちがよりしなやかに生きるためのヒントになります。

この記事では無常の考え方と日常での取り入れ方をご紹介します。

無常を知ると、苦しみが少し軽くなる

たとえば、仕事で大きな失敗をして落ち込んでしまったとき、
「このつらさは一生続くのではないか」と感じた経験、ありませんか?

わたしも過去に、
仕事で大きなミスをして眠れない夜を過ごしたことがありました。

「色んな人に迷惑をかけてしまった」という罪悪感
「もっとこうしていれば良かった」という後悔
「みんなに嫌われたのではないか」という不安・・・

そんなとき、ふと思いました。

この気持ちもずっとは続かない

そう思えたことで、呼吸が少し楽になったのです。

無常を思い出すことで、「感情は流れていくもの」と知ることができます。

「いまは苦しいけれど、きっと落ち着くときが来る」
と心の中でつぶやくだけでも、苦しみにのまれずにいられます。

反対に、幸せな瞬間もずっとは続きません。
これは一見、ネガティブな印象を受けますがそうではありません。

ずっと続かないからこそ、”いま、このとき”を大切に味わおうという気持ちになるのです。

美しい夕焼けを見たとき、ふっと胸がいっぱいになるのは、
それが二度と同じ形では現れないと、どこかで知っているからかもしれません。

無常は「終わり」を知らせるだけでなく、
いまを生きよう」と背中を押してくれるのです。

日常でできる「無常」の実践

無常は、頭で理解しているだけでは十分ではありません。
日常で少しずつ”体感”していくことで、しなやかな心が育ちます。

この章では、日常生活の中で実践できる「無常」の感じ方をご紹介します。

一日の終わりに振り返る

寝る前に、今日あったうれしいこと、つらいことを書き出してみます。

このとき、きれいに書かなくてもOKです。
きれいに書こうとすると、できなかったときに心が折れてしまいます(笑)

今日のできごと、そのときのあなたの感情を、
心に浮かんだまま、ありのまま、書いてみましょう。

「今日、こんなことがあったな」と客観的に事実だけを見ると、
感情に引きずられにくくなり、気持ちが落ち着きます。

また「悲しかった」や「うれしかった」と認識すると、
そのときとはまた違う感情に気づけるかも知れません。

例えばあのときは「腹が立つ」しかなかったけれど、実はその裏に
「認めてほしかった」という願望が見えてくることもあります。

そして最後に、「これはもう終わった出来事」と認識するだけで、
明日への心の負担が少し軽くなるでしょう。

自然の変化を感じる

わたしは空を眺めるのが好きなのですが、あなたはどうですか?

朝日や夕日、雲の移ろいを意識して眺めるだけで、
無常が「理屈」ではなく「体感」になるんです。

例えば、

  • 朝の光が昨日とは少し違って見えたとき
  • 雨上がり、雲の間から差し込んだ光がきれいだったとき
  • 夕方、さまざまな色が混ざってグラデーションを作り出していたとき

それらを眺めていると、
「世界は常に変わり続けている」と実感できます。

空を眺める・・・おすすめです。

執着をひとつ手放してみる

日常で小さな変化を自分から起こす練習をしてみましょう。

例えば、

  • 着ていない服を手放す
  • いらないメールを削除する
  • 完ぺきじゃなくても良い、と自分にOKを出す

このように、小さなことから手放してみましょう。

”手放す”ことに慣れてくると、

  • 変わることは怖いことではない
  • (手放したものが)なくても案外、生きていける
  • むしろ「囚われない生き方」のほうが楽かも

そんな感覚が育ってきて、心がとても自由になりますよ。

無常が教えてくれる「希望」

無常は、ただの”儚さ”ではありません。
むしろ、「どんな状況もずっとは続かない」という希望の言葉でもあります。

例えば人間関係でのトラブルも、
時間が経てば新しい形に変わっていきます。

「もう二度と笑い合えない」と思った相手とも、
数年後に思いがけず再会して、穏やかに話せることもあります。

また体調の不調も、ずっとではありません。

「日にち薬」という言葉があるように時間とともに回復するか、
工夫次第で上手に付き合える形を見つけられます。

どんな状況にも変化の可能性があると知ることは、心に大きな安心を与えてくれます。

逆にあなたの”いま”がとても満たされているなら、
「この瞬間をしっかり味わおう」と様々なことを大切に思えるようになります。

家族と囲む食卓、友人との他愛ない会話、
こうした時間がどれほど尊いかに気づけるのです。

今を生きるために

ブッダは、「諸行無常」という言葉で、すべては変わると説きました。

それは絶望ではなく、わたしたちに「いまをどう生きるか」を問いかけています。

変わりゆく世界だからこそ、きょうの一杯のお茶を味わい、
目の前の人と笑い合う時間を大切にする。

これこそが、無常の教えを生きるということです。

まとめ

無常を知ることは、
心をしなやかにし、苦しみをやわらげてくれます。

「この瞬間は二度と来ない」と思えば、日常の何気ない出来事も愛おしく感じられます。

すべては移ろうこそ、”いま”のわたしを大切に

その積み重ねが、未来のあなたをやさしく包みこんでくれるのです。

コメント